映画が好きだと自覚するずっとずっと前。
わたしは魔女の宅急便に出会って恋をした。
祖父が買ってくれた魔女の宅急便のVHS。何度も巻き戻して繰り返し見た。
ホウキに跨って空を飛ぶ主人公のキキに憧れた。わたしも空を飛びたかった。飛べると思っていた。親に頼んで竹ぼうきを買ってもらった。ワンピースを着て竹ぼうきに跨って坂道をジャンプしながら何度も下った。当時、実家で飼っていた猫はトラ模様の「トラちゃん」だったけど、ジジと呼んだ。慣れない名前で呼ばれるジジの顔はいつだって不機嫌だった。
わたしが猫派なのは、キキに寄り添って話しができるジジが可愛かったからだと思う。
わたしは、靴が好き。
特に赤い靴に目を奪われる。
キキが、赤い靴が飾られたショウウィンドウを覗き込むシーン。
わたしも赤い靴に心を奪われた。赤い靴が欲しかった。当時、わたしが持っていた赤い靴はキティちゃんの長靴だけだった。毎日履いた。幼稚園の親子遠足の集合写真、前列にしゃがんで写るわたしの靴は赤い長靴。空は冗談みたいに雲一つない青空。
キキみたいに、地元を離れてわたしの街を見つけなければいけないと思っていた。高校も県外に進学しようとしたらさすがに止められた。せめて高校までは と言う親の言葉を渋々飲み込んで高校生活は地元で過ごした。
地元を離れる日、わたしは新幹線の中でユーミンの「ルージュの伝言」と「やさしさに包まれたなら」を何度も再生させた。母が駅で買ってくれた駅弁を開けて食べる余裕がないくらいに泣いた。寂しさと母の愛にやさしく包まれたんだと思う。窓から見える景色が見慣れないものに変わる毎にキキの逞しさに気づかされた。
キキに憧れていた幼いわたしがキキよりお姉さんになって、ホウキで飛ぶことは叶わなかったけれど地元を勢いよく飛び出した。
キキのお父さんが言う。「いつの間にこんなに大きくなったんだろう、うまくいかなかったら戻ってきてもいいんだよ。」のスタンスでいつまでもわたしに優しい父は、わたしの前では涙を見せたことがないけれど、最近はゼクシーのCMを見るとわたしのことを想って泣くらしいことをデリカシーのない母が教えてくれた。
魔女の宅急便は、わたしの人生を引っ張てくれている気がする。
映画を好きになって、いろんな作品に出合って衝撃を受けてオールタイムベストが更新された!!だとか騒ぐことがあるけれど、私この映画が好きです。
ジブリって、すごい。